歯車偏心誤差のインプロセス計測に関する研究
大 岩 孝 彰** 吉 田 理***
研究の目的
歯車は動力を滑らかに伝達し,回転角を正確に伝える必要があるため,歯車の加工後や組立て時には歯車が正しく加工され,組み付けられているか測定する必要がある.歯車列に回転誤差などがある場合,機械が精密であるほどこの影響は無視できないほど大きくなり,例えば印刷機では印刷物の色ズレなどが生じる.このような歯車の誤差には大きく分けて,歯形誤差やピッチ誤差のような短周期のものと,偏心のように歯車一回転にわたって観察される長周期のものに分けられる.特に後者の長周期の誤差成分の測定は,歯溝にピンなどの測定子を挿入して測定する歯溝の振れの測定1)かマスタ歯車や基準円盤を用いるかみあい精度試験などによって行われてきた.
しかしこのような誤差の発生要因は,歯切り時の製作誤差などの歯車自体の誤差だけでなく,歯車取付時のアライメント誤差,軸受の回転誤差や歯車列運転時の負荷変動などに起因する軸や軸受のたわみなどの軸受系の要因も考えられる.そこで機器の運転中における軸受系の誤差を含めた歯車の偏心等の誤差を高精度にインプロセスで測定・調整することができれば,機器の性能向上に有効であると考えられる.また,従来のかみ合い試験方法などでは,高精度なマスタ歯車や基準円盤などが必要であったり,ロータリエンコーダなどの高精度な角度測定器を試験歯車と同軸に精密に取り付ける必要などがあった.そこで本報では,このような設置の困難さを解決し,ロータリエンコーダの器差やアライメント誤差などの影響を受けずに,歯車列の高速運転時においても試験歯車のみの偏心成分を含む低次の誤差成分を測定する方法について述べ,実験において歯車の偏心を調整した結果について報告する.
* 静岡大学工学部(〒432-8561浜松市城北3-5-1)
** 静岡大学大学院理工学研究科
Figure Measurement setup for transmission error of the rotating gear train
Figure General view of experimental setup for measurement of ecentricity
参考文献
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