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コンタミフリー遠心ポンプContamination-Free Centrifugal Pump

補助人工心臓は,重症心不全患者の血液循環を補助する血液ポンプです.患者の心臓移植までの橋渡し,または心機能回復までの橋渡し目的で使用されます.従来の拍動流形の補助人工心臓では,機械的な摺動部分において血栓が生じ,それが脳に到達して脳梗塞を引き起こす恐れがあります.半導体製造分野でのウェハ洗浄には,微小ゴミが一切混入しないクリーンな送液ポンプが求められます.従来の機械シールを用いた遠心ポンプや,マグネットポンプではインペラに機械的摩擦が生じるため,摩耗粉が作動流体に混入する問題があります.

そこで,羽根車がポンプ室内で非接触支持され,高速回転するベアリングレス遠心ポンプが提案されています.機械的摺動部分が無く,摩耗粉などのゴミ(コンタミネーション)が作動流体に混入しない,高耐久性,メンテナンス・オイルフリーなどの利点を有するため,上記問題を解決することができます.当研究室では,従来形と比較して小形・高剛性・低消費電力のベアリングレスディスクモータを採用した,新しいコンタミフリー遠心ポンプの研究を行っています.現在は,ポンプ駆動中に回転羽根車に作用する流体力を低減できる構造を検討しています.

遠心ポンプにおける回転子に作用する流体力解析Fluid Force Analysis

遠心ポンプでは,ポンプ中,回転子の半径方向と軸方向に流体力が作用します.特に,軸方向の流体力は軸スラストあるいは軸推力と呼ばれます.2自由度制御形ベアリングレスポンプでは,回転子の軸方向の運動は磁気カップリングにより受動的に支持されます.したがって,軸スラストが定常的に作用すると,ばね定数に比例した値だけ回転子が軸方向に変位します.回転子が変位すると,インペラとハウジングが接触し,最悪の場合破損する恐れがあります.また,回転子の半径方向に定常的な流体力が作用すると,位置決め制御をしているので回転子の半径方向変位は不変ですが,常に磁気支持力を発生させ続ける必要があるため,消費電力が増加してしまいます.本研究では,2013年度,流体解析ソフトAcuSolve(Hyper Works社--JSOL社)を用いて,磁気浮上式遠心ポンプにおける回転子に作用する流体力を低減できる構造を検討しました.

Example of fluid force analysis


ベアリングレスディスクモータBearingless Disk Motor

下図は,当研究室で提案しているベアリングレスディスクモータの構造を示しています.回転子は2層構造であり,上下層間にはスラスト方向に着磁された永久磁石を挟み込みます.このため鉄心部はバイアス着磁されます.各層の鉄心極間には,図の矢印で示すラジアル方向に着磁された永久磁石を挿入します.この場合,スラスト方向から見ると,回転子は8極に着磁されています.

固定子は,12個のC形鉄心を有する電磁石から構成されます.C形にすることでコイルエンドが半径方向に広がるため,軸方向の高さが短縮化可能です.固定子には,三相2極の磁気支持巻線と,三相8極の電動機巻線が施されており,磁気浮上と回転を,それぞれ独立に制御することができます.

Structure of bearingless disk motor

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磁気支持原理Principle of Magnetic Suspension

磁気支持力の発生原理について説明します.図の赤線で示す永久磁石のバイアス磁束により,回転子鉄心部は結果的に半径方向に着磁されます(図ではN極).このバイアス磁束に,図の青線で示す2極の支持磁束を重畳させると,空隙部において磁束密度の不平衡が生じ,磁気支持力を発生させることができます.図では右側の磁束密度が増加し,左側が低下するため,右側に支持力が発生します.回転子の半径方向の2自由度を能動的に制御します.

回転子の軸方向の1自由度と傾きの2自由度は,受動的に支持されるため,能動的に制御する必要はありません.図のように,固定子-回転子間の磁気カップリングにより,回転子が軸方向・傾き方向に変位した場合,復元力・復元トルクが作用します.

Principle of suspension force generation

Principle fo passive magnetic suspension

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試作1号機First Laboratory Prototype

下図は,ベアリングレスモータの試作1号機です.2007年度に当時東京理科大学修士1年の岸裕二君がJMAG(JSOL社)を使って設計し,次年度,モーションシステムテック様に依頼して試作しました(朝間は当時千葉明教授研究室の助教).支持巻線構造や,渦電流式変位センサ(電子応用社)の配置を工夫することで,安定な非接触磁気支持を実現しました.動画は,試作3号機の回転の様子です.4000rpmまで安定に磁気浮上回転しました.

Fabricated bearingless disk motor

Third laboratory prototype

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コンタミフリー遠心ポンプContamination-Free Centrifugal Pump

2011年度に,当時修士2年の田村智康君がベアリングレスディスクモータの回転子の上側に羽根車を取り付け,エポキシ充填した固定子上にハウジングを取り付けることで,遠心ポンプ化させました.試作は,静大工学部工作技術センターに依頼しました.動画は,イノベーションジャパン2011での展示した時の様子です.

Contamination-free centrifugal pump

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