超精密メカニズムの最適化デザインに関する研究
-Optimum design for Ultra Precision Mechanism-

弾性ヒンジ切欠き部の形状最適化設計
-Shape Optimization for Flexure Hinges-

 近年,超精密加工機や測定機に用いる案内要素の高精度化の要求はますます高くなっています.特に走査型顕微鏡(SXM)の試料微動台や半導体製造装置など,複雑な構造・形状をした精密運動機構(左図)が用いられ,このような機構では回転対偶として円弧切り欠き形状をした弾性ヒンジ右図)が多く採用されています.

  

 弾性ヒンジは一般に摩擦によるスティックスリップがなく位置決め精度を向上でき,発熱が少なく移動速度を上げられるという長所を持っています.しかし反面剛性が低く,それを補うために切り欠き部の肉厚を厚くすれば弾性変形のためのエネルギ損失が大きくなり,充分な性能が得られなくなってしまいます.これは特に圧電アクチュエータの変位をてこを使って拡大しようとするとき顕著となります.

 このように弾性ヒンジを用いた超精密機構においては,精度・剛性・固有振動数を最大化するという目的と損失を最小化するという目的は互いにトレードオフ(競合関係)にあり,同時的最適化設計は困難となっています.

 従来,弾性ヒンジ切欠き部形状として単純な円弧が使用されてきました.本研究室では切欠き部の引張り・圧縮剛性と曲げコンプライアンスを同時的に最大化するような切欠き部形状の最適化設計を行っています.



 以下に3種類の切欠き部形状の弾性ヒンジに同一の曲げモーメントを加えたときの応力を計算した結果を示します.
引張り剛性はすべて等しくしてあります.


 これは従来の円弧状の切欠き部の応力です.中央部のみが応力が高く,中央部のみで変形していることがわかります.この場合あまりたわみません.



 これは矩形(直角形状)の場合です.応力が高い部分が多く,かなりたわみます.しかし角部の応力が高く(赤い部分),そこで応力集中が起こっていることを示しています.この部分では材料の疲労が生じやすくなります.



 これは切欠き部のの応力を出来るだけ均一になるように形状最適化を行ったものです.表面の広い範囲で応力が均一になっていることがわかります.この形状では応力集中も発生せず,大きくたわませることが可能です.


ねじり型弾性ヒンジの形状最適化設計
-Torsional Elastic Hinge-

この他,下図のようなトーションバーを用いたねじり型弾性ヒンジについての研究も行っています.
この形式のヒンジは回転角度が大きく,回転中心のずれが少ないという特長を持っています.


下の図は有限要素解析用のメッシュ図です.


参考文献 (新しいものから並べてあります)
印刷論文

ball1.gif 大岩 孝彰,松永 高宏
ねじり型弾性ヒンジに関する研究
精密工学会誌,66巻6号(2000)955-959.


ball1.gif 大岩 孝彰,杉本 敏彦
弾性ヒンジの形状最適化に関する研究
精密工学会誌,63巻10号(1997)1454-1458.


口答発表

ball1.gif 大岩 孝彰,松永 高宏
ねじり型弾性ヒンジに関する研究(第2報)―ヒンジの形状最適化―
1999年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,(1999)126.

ball1.gif 大岩 孝彰,松永 高宏,本井 正扶三,松田 孝
ねじり型弾性ヒンジに関する研究 1998年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,(1998)470.


ball1.gif 大岩 孝彰,杉本 敏彦,松永 高宏
弾性ヒンジの形状最適化設計
1997年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,(1997)1151-1152.


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