機械力学I (質問・要望に対する回答)

第5回: 5月15日分



提出してもらったミニテストに書かれていた質問・要望に対する回答です。


 自動車エンジンのクランク軸のねじり振動などがありますね。第12回の講義でやりますが、ピストン・クランク系ではトルク変動があり、それがねじり振動の原因になります。


 振り子の振動も角変位θですが、これがAcosωtとなることは想像できますよね。


 私も暗記が苦手で、高校時代は暗記しなくて済む物理が好きでした。

 世界史も、話自体は好きだったのですが、年号は全滅でしたね。


 はりのばね定数などの公式は覚えなくてよろしい、材料力学の講義では無いので。試験等で必要な際は問題に添付します。しかし、機械力学の講義なので、基本的な要素の慣性モーメントはチェックしておいてください。


 ニュートンの言葉ですが、私が遠くまで見ることが出来るのは巨人の肩の上に乗っているからだ、と。ニュートンの偉大な業績も、先人たちの業績のおかげだということです。実際、ニュートンの万有引力の法則と運動の法則は、ケプラーの天体の法則が元になっており、ケプラーの法則はティコ・ブラーエの精密な観測があってのものですから。

 理系の学問はだいたい積み重ねです。機械力学の講義も、高校までの数学・物理、1年でやった微積、線形代数、力学・波動(それから1部材料力学)の上に成り立っています。それがちゃんと出来ていないと、巨人の肩ではなく、足下をうろつくことになりますから。


 って言うか、それが普通でしょ!


 最近はアニソンしかチェックしてないなぁ(笑)。若い頃はそれなりにいろいろ聞いていたのですが。


 うちの3姉妹って、ずいぶん昔の番組じゃないですか。しかも夕方の放送。今、どこかで配信しているの?


 今回の小話は、前回の続きということで単位の話。。

 「アカデミックイングリッシュI」で私が使っていたテキスト、ばね定数の単位は[N/m]ではなくで[lb/in](ポンド/インチ)となっていることは前回お話ししました。さらに読んでいくと質量の単位として、[kg]ではなく[lb-s2/in]とあります。はて、前回1[lb]≒0.45 [kg]と説明したのに、なぜ質量の単位が[lb]ではなく[lb-s2/in]なのでしょうか。

 答えは前回の話のなかにもあります。ばね定数の単位はSI単位系では[N/m]、[N]は力の単位で[m]は長さの単位ですね。ヤードポンド法ではばね定数は[lb/in]ですが、[in]は長さの単位です。とすると[lb]は・・・・・・実は質量ではなく力(あるいは重量)の単位なんですね。[lb]が力の単位なのだから、質量の単位はそれを重力加速度で割って[lb-s2/in]となるのです。何か釈然としませんね。

 昔は日本でもSI単位系ではなくメートル法重力単位系というものが使われていました。質量の単位は[kg]なんですが、力の単位は[kgf]あるいは[kg重]といって、その質量に作用する重力の大きさを示しています。1[kg]の質量に作用する重力を1[kgf]とすると、感覚的にはイメージしやすいのですが、科学的にはいろいろ不合理なことも多いので使われなくなりました。

 単位の取り違えでこんなトラブルが起きたことがあります。1999年の9月のこと、アメリカの火星探査機マーズ・クライメイト・オービターは火星に接近しておりました。そのままでは火星を素通りしてしまうので、スラスターを噴射して軌道変更し、火星の衛星軌道に入らないといけません。ところがこの時に、スラスターの噴射量の大きさの単位をニュートン・秒とポンド重・秒と取り違えておりました。その結果、マーズ・クライメイト・オービターは予定の軌道には入れず、火星に墜落してしまいました。