大岩研のホームページ(トップページとその近くのリンクのページ)の背景には,機械関係の人には見覚えのある「マイクロメータ」が使われています.
このマイクロメータの歴史は以外に古く,蒸気機関を発明したジェームス・ワット(James
Watt)により1772年頃考案されたとのことです.その後,マイクロメータはいろいろと改良され,現在に続いています.
ワットが蒸気機関を開発した当時,それの部品を加工するための工作機械の精度は著しく悪く,その部品の寸法を正確に測るためにこのマイクロメータを考案したと言われています.もしマイクロメータの考案がなければ蒸気機関の発明も,その後の産業革命もなかったかもしれません.
その後,マイクロメータは改良が行われ,下の写真のようなスマートなものになっています.ここで重要なのは測定長さ方向と測定系の作用線(ここではネジ軸)が一直線上になっているということで,これは1880年にエルンスト・アッベ(E.Abbe,ドイツCarl Zeiss財団の共同研究者で物理学者)が明らかにした「アッベの原理」に沿って作られています.
この「アッベの原理」は現在でもとても重要な精密機械・精密計測分野における原理となっています.例えば,超精密機械の精度チャンピオンである半導体製造装置の一つであるステッパなどもこの原理を満足するように作られているのです.しかし,この原理を完全に満足するように機械を設計することは,かなり困難な場合も多く,機械設計者の悩みの種になっています.
以上のように,マイクロメータは近代の精密機械の礎であり,アッベの原理を満たす理想的なメカニズムでもあります.したがって,精密機械の研究を志す者にとっては精密機械のシンボルとなりうるのではないでしょうか.
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